私好みの新刊 2022年4月
『世界の納豆をめぐる探検』
ほぼ30年、世界の辺境地を訪ね回っていた著者がふと納豆に出くわした。
納豆は安く食べられ作りやすいので、その地の伝統食品となっている。それ
なのに、納豆はあたりまえ過ぎて人々に語り継がれることもなかった。7年
もの歳月をかけて世界各地の納豆を追跡したようすが語られている。
その前にまずは納豆の食べ方の紹介。ふつうはご飯に混ぜて食べるが、オ
クラを混ぜたり、炊き込みごはんにしたり、なすを入れてチーズ焼きにした
り、卵に包んでオムレツにしたりとか、いろいろな食べ方が紹介される。つ
ぎに納豆の作り方。納豆は大豆が発酵したものだが、今は工場で作られてい
ることの紹介がある。続いて、日本伝来の納豆の作り方が紹介されている。
昔の農家は、なんと大豆を煮て稲わらで包むだけで作っていた。稲わらに納
豆菌がくっついているのだ。そういえば、土の中にもたくさんの細菌がすみ
着いている。その伝統的な食べ方は、安土桃山時代から伝わり、大名たちに
もふるまわれたとか。納豆の起源も書かれている。さまざまな伝説がおもし
ろい。
それらの話が終わって、いよいよ世界各地の納豆の紹介に入る。まずはミ
ャンマーから。ミャンマーではクワやイチジクの葉っぱやシダで大豆をくる
む。それらに納豆菌はついているらしい。天日で干して団子状にして食べる
とか。ある部族は、魚や野菜とともに食べる。多彩な食べ方は栄養満点であ
る。次は、ネパール。なんとカレー味にするとか。次は、中国のミャオ族。
炒めものにしてご飯に混ぜて食べるという。次は、韓国。汁ものにして食べ
ることも多いとか。粉にしてサプリメントにもする。日本と同じく発酵には
稲わらを使う。その他、アジア各地、ナイゼェリア、アフリカ各地の納豆の
作り方、食べ方の紹介がある。所変われば作り方、食べ方も様々だ。
最後に納豆の起源の話がある。稲が日本に伝わった弥生時代から納豆はあ
ったのか・・大豆はいつごろからあったのか・・などなど研究の一端が記さ
れている。 2021年
2月 700円
『ニュースなカラス観察奮闘記』 樋口広芳/著 文一総合出版
この本自体は児童書でないが、やさしい文体で内容的にも小学校高学年くら
いから読めるので取り上げてみた。他に、『ヒグマの旅』とか『エゾシマ
リス』などがある。
この本は、今まで新聞等に取り上げられニュースになったカラスを追及して、
真相を明らかにしていく話を数々載せている。カラスの個体識別までしてカラ
スの行動を追及している。「賢いカラス?」「迷惑なカラス?」、カラスの行状
が次々とユーモラスに語られている。
まず初めに、市街地の公園にある水道栓をカラスがゆるめ水を飲んでいる話。
こんなこともするのかと驚かされる。くちばしで器用にカランの出っ張りを嘴
でつついてゆるめるらしい。水道水で水浴びもするという。もちろん出した水
はほったらかし、栓をもどさないで飛んでいく。でも、公園を訪れた人が気が
付いて栓を〆るという。横浜を初め、札幌、神奈川など各地で観測されている。
次に、道路にクルミを置いて車のタイヤでクルミを割り、割れたクルミの実
を食べているカラスの話。こちらは命がけだ。車は次々とやってくる。なかに
は、自動車学校で練習してから、実際の道路に仕掛けるという。「天才カラス」
か、「無謀カラス」か。秋田では、人の足でクルミを割らせるカラスも目撃さ
れている。こちらは。「安全カラス」か。次は、カラスのビワ好きの話。おか
げでビワの種が線路沿いに落とされ線路沿いにビワの木が多くなる話。これは
カラスの自然な行動の一つ。次に線路に置き石をするカラスの話。これはカラ
スの習性としては邪魔な石をそっと線路の上にのせるという話だが、ほってお
くと危険でもある。何が原因でどのように対処するかおもしろい話である。
次からは、カラスの「悪行」?の数々。まずは、石鹸の話。幼稚園や公園の石
鹸が、次々と無くなる〈事件〉。これもカラスの仕業と言う。お墓にあった石鹸
が次々と無くなるという話はよく聞く。カラスは何のため石鹸を持ち去るのか。
そのほか、神社のろうそく持ち去り〈事件〉、ハンガーや、浮き球やゴルフボー
ル持ち逃げ〈事件〉、カラスの銭湯通いや赤坂、六本木通いなど、興味ある話が
続く。
2021年11 月 1,600円